寮に行く途中の車の中で私は、10点や20点といったとても悪い点数ですから、自分のレベルがよくわかったでしょう?これから真剣に頑張りましょう!と話すシナリオを考えていました。しかし。。。このシナリオはものの見事に崩されることになります。
35分の試験時間ですが、20分くらい経った時ルゥが「もう出来ました」と言います。私は諦めたのだろうと思い、”35分間ですから時間までしっかり確認しましょう”と言います。その五分後くらいに、スゥが「わたしも出来ました」と言います。私は再び”後10分ありますから、しっかり考えましょう”と言いました。
”何だか簡単に諦める子たちだな”と感じ、こういうことも今後指導していかないといかんな・・等と考えていました。
時間になり採点をした私はかなり驚かされました。ルゥが 55問中41問正解、スゥが55問中34問正解。なんだこれ??二期生たちが3年目でようやくこれくらいの点数だったぞ??
ひょっとしたらカンで選んで正解したのかもしれないと思い、、スゥにこの問題は、どうしてこの番号を選びましたか?と聞いてみたら、彼は文法的な事を理解して選んでいるのがわかる回答だったのでさらに驚きました。
私が感じていた”この子が同じ間違いを繰り返すのは日本語の問題ではない”ということが正しかったかもしれないようです。
確かに文字と語彙だけで決めつけるのは早計だと思いますが、少なくとも現場サイドがいう”全然ダメだ”ではないことが分かります。
そこで、スゥに”私はあなたの担当次長からスゥの日本語がダメですから日本語を勉強させて欲しいと言われました。しかし、この点数を見るとあなたは日本語が分からないではありませんね?”と言ってみました。
スゥは「私の日本語ダメです」といいますので、”スゥ、それは違います。もし、あなたが5点や10点なら、日本語がダメです。しかし、あなたは34問正解です。これは61.8%の正解率です。ですから、あなたは日本語が分からないではありません”
続けて、”あなたは仕事でよく怒られます。なぜ怒られますか?”と聞いていきます。
スゥは「いつも仕事 方法を間違えます」と答えます。
”そうですね。どうして間違えますか?”と質問を続けます。
たいていこのような質問をすると、わかりませんと答えるのですが、
「機械怖いです」と言います。
どうやらこれが問題の本当の原因だったのだと理解しました。機械が怖いので、作業をする時逃げながらやってしまい、どうしても指導されたとおりに出来ません。このような作業方法は不良品の原因になるだけでなく、怪我をする可能性も出てきますから注意されるわけです。この繰り返しによって今回の問題は起こったのだと思います。
そこで私はスゥに、”危険”と”怖い”は同じですか?と聞いてみました。スゥは、「違います。危険は場所、事の問題です。怖いは自分問題です」と言います。
”そうです。危険と怖いは違います。スゥ、機械は危険ですが怖いではありません。正しく動かさないと危険です。しかし、怖いではありません。あなたがいつも仕事の方法を間違えるのは、機械が怖いですから間違えますか?”と確認してみます。
彼は短く一言「はい」と答えました。