お正月休みが開けた頃、日本の経済状況は日増しに深刻になってきていました。
会社でも雇用確保のために、雇用調整助成金を申請することになり、木曜日から日曜日まで休みの週休4日になりました。
そうなってくると、輪をかけて ”寂しいの感じ” になる二人組です。
そこで、所属長に協力してもらい、木曜日は旋盤加工の勉強を教えてもらって、金曜日は私が日本語の授業をすることになりました。
この頃、彼らに変化が現れてきます。自分自身が真剣に日本語を勉強しなければ、と思う出来事が彼らにあったのです。
二人の性格は、一人は活発でしっかりと自分の考えを持っていてプライドも高い感じです。名前をリュウと言います。 もう一人は控え目な性格ですが、かなりの頑固者です。 初めて食べるだろうな、と思う日本食を勧めても、先入観で「食べません」と言う典型的な食わず嫌いを実践しています。この子をジャンと言います。
リュウは、旋盤の経験があります。 自分の作業方法を行いたいと、所属長に話しましたが、ただ怒られただけのようでした。 夕方仕事が終わって事務所に来た時、彼の目は真っ赤でウルウルしています。 どう見たって泣きましたよ、の顔です。 どうしましたか?と聞いても、最初は頑なに顔を洗いましたから、と言います。
そうですか…と違う話をしていると、
リュウはポツポツ話を始めます。
「今日私は良いの作業方法を話します。私は怒られます。どうして怒られますかわかりません」
と言います。
そこで私は、
「会社で決められている作業方法は、あなた達を怪我から守るために決められています。もし、リュウが本当にその方法が良いと思うのなら、何度も話してみたらどうですか?」
彼は
「私は日本語 ダメですから 話す出来ません」
この時、私は彼がとても可愛くてニコニコしたい気分ですが、そこはグッと我慢し、
「では、リュウ、どうしたら良いと思いますか?」
するとリュウは、ウルウルした目をさらにウルウルさせながら
「私の日本語 好(はお=良い)にします」
ここから彼の日本語は飛躍的に伸びていきます。